ジキル&ハイド V47.5
直線弾道とハイスピンの勝てるラバー


基本性能は<意図的な直線弾道>
性能面における<二面性>を旨としたジキル&ハイドシリーズで、H52.5と同時にリリースされたのがV47.5だ。このラバーの持つ二面性とは、「直線弾道」と「ハイスピン」である。
プレーヤーが最初にV47.5を打てば、まず最初に「ボールが直線的に飛んでいくな」という印象を受けるはずだ。近年のラバーのメインストリームとなっているスピン系テンションでは、「勝手にボールが上がる」のを良しとする傾向があるが、V47.5は自然状態ではあまり「上がる」タイプのラバーではない。
ああ、それならやめとこうと思ったそこのあなた。V47.5の真の魅力とポテンシャルを知らずに第一印象だけで敬遠すると、非常にもったいないから続きを読んでいただければ幸いだ。とりわけ直線弾道の意図と、その効果がわかれば評価はガラッと変わる。
相手のカウンターを回避できる神性能
フラット気味のタッチでボールをとらえた時、V47.5からは心地よい弾力感とともに勢いのある打球が発射される。打球角度はそれほど上がらないが、確かな食い込みと引っかかりがあるから、スリップして落ちる心配はない。安定してネットを低く越すその球筋は、相手にとって非常にやっかいだ。
近年の卓球、特にハイレベルな戦いにおいては、いかにして相手のカウンターを回避するかがテーマとなりつつある。いくら自分が良いボールを打ったつもりでも、それが相手のカウンターにつかまれば、即座に失点の原因となってしまう。
その意味で、V47.5は非常に優秀なのだ。コンスタントに低弾道のボールで相手コートを攻めることができるため、相手からカウンター攻撃を受ける心配はほぼない。むしろラリーが続けば続くほど、自らの形勢は有利に傾いていく一方だ。
いよいよ相手が低いボールのラリー戦を嫌ってドライブの弧線を高くしてきたら、そこを狙って一撃必殺のパワーカウンターをお見舞いする――この戦い方を会得すれば百戦百勝も夢じゃないだろう。
直線弾道×ハイスピン=勝利
直線弾道が基本となっているのなら、V47.5はあまり回転のかからないラバーなのかと思われそうだが、それはとんだ誤解だ。<直線弾道なのにハイスピン>それが、このラバーの持つ魅力的な二面性である。
サービスやツッツキ、チキータやループドライブなど、薄いタッチでボールをこすった場合、V47.5は強烈な回転を発生させてくれる。相手からすると、ラリー戦における低弾道と小技におけるハイスピンのギャップで、とんでもなく技術を狂わされることになる。
使う側の技術には、そこまで高度なものが求められるわけではない。ふつうにフラットで打球するシーンと、キュッと回転をかけるシーンにちょっとしたメリハリをつけるだけで相手をキリキリ舞いさせることができる。
あなたは、自分でも気づかないうちにボールにマジカルな変化を与えるテクニシャンになっていて、自分でも知らないうちにゲームで得点を量産しているという、不思議な体験を得られるはずだ。
名作ヴェガXを最上級に磨き上げた
V47.5のラバー全体としてのアーキテクチャの基本設計は、ヴェガプロ→ヴェガXの系譜をひな型としている。ヴェガシリーズ全体は中級者向けのラインナップだが、その中でトップ層の使用にも応えられるのがプロとX。そして、それを最上級にまで磨き上げたのがジキル&ハイドV47.5となる。
しっとりとした質感で強い引っ掛かりを持つトップシート表面。やや密集した配列で反発エネルギーに満ちているトップシート下層の粒。それを下支えするスポンジはミディアムサイズの気泡を持ち、しなやかさと力強さの融合によりボールに命を吹き込んでくれる。
生産工場では専用ラインを用い、熟達した職人が手作業で製作と品質管理を行うため、その製品クオリティはXIOM全ラバーの中でもトップクラス。V47.5においては、直線弾道とハイスピンの繊細かつ絶妙なバランスを死守するべく、甚大な労力が注がれている。
バックハンドの攻守で輝く性能
V47.5の特性を最大限に生かすには、まずバックハンドでの使用をおすすめしたい。フラット打法でとらえたボールの低弾道と、スピンをかけた時のボールの伸びを自在に使い分けることで、実戦に頻出するバック対バックの打ち合いで優位に立てるからだ。
下回転のボールに対してバックハンド攻撃を仕掛ける際には、V47.5なら2つのオプションを選択できる。すなわち、トップシート表面の引っ掛かりを存分に生かしたループドライブか、スポンジとトップシートの粒が持つ弾力性を活用したフラットヒットか――の二択だ。
かけて良し・弾いて良しのラバーだから、どちらも高確率で攻撃が成功するし、相手にとってはどのようなボールが来るのかを予測しづらいため、反応と対処に苦慮することとなる。
また、ブロックの心地良さも秀逸。相手から強いボールを受ければ受けるほど、V47.5はまるでそれを喜んでいるかのように跳ね返す。快音とともに相手コートを駆け抜けるカウンターブロックは、相手が基本姿勢に戻る時間を与えないほどの早業だ。もちろん、回転をかけ返すカウンタードライブも難なくこなしてくれる。
フォアハンドの打ち合いにも強い
フォアハンドでV47.5を使用する際は、ドライブとスマッシュを併用する意識を持つと良い。トップシート表面で引っ掛けるドライブと、ラバー全体にガッツリ食い込ませてブチ当てるスマッシュの二刀流で相手を料理していくのだ。
互いが中陣に下がっての打撃戦においては、どんどんインパクトを強くして直線弾道のドライブを連発することで、相手のメンタルと技術を押し込んでいける。強気の攻めで打ち切ってポイントできれば、ゲーム中のテンションは最高潮に達するだろう。
不本意ながら打球点が落ちてしまった時にも、V47.5は頼り甲斐を見せてくれる。しっかりトップシートに引っかけてドライブすれば、コキュン!という心地良いサウンドと感触でボールが上がり、ピンチをしのぐことが可能だ。
ラケット選択で変わるプレーの方向性
V47.5の使い勝手は、ラケットの性質によってずいぶん違ってくる。まず、アウター素材のラケットに貼った場合は、球離れの速さと直線弾道が大いに強調され、ハイリスク・ハイリターンの速攻タイプとなる。前陣から下がらず、先手必勝で攻めまくる卓球を志向するなら、これ以上ない組み合わせだ。
インナー素材のラケットでは、攻守のバランスが非常に良くなる。先手攻撃から攻め抜くプレーもできるし、ブロックなどの守りから入ってラリー戦でポイントをあげることも可能。高い攻撃性を保ちながら、よりオールラウンドに戦いたいタイプに向く。
純木材ラケットと合わせた場合には、V47.5のリスキーな部分がかなり緩和される。しっかりボールをキャッチしてからリリースする感覚が得られるため、ミスを極力少なくしつつ、攻撃時には圧力のあるボールを打ちたいというタイプにおすすめだ。
万人向けではないが、勝ちやすいラバー
万人にとって使いやすいラバーかと言われれば、そうではないかもしれない。しかし、勝ちやすいラバーかと言われれば、自信を持ってイエスと答えよう。
あなたは今、高性能だけれども没個性的なラバーを選択し、勝利の可能性を狭めていないだろうか。もしそうなら、ジキル&ハイドV47.5を手にしてみよう。それはきっと、あなたをVictory=勝利に導いてくれるはずだ。